GX志向型住宅におけるHEMSの役割とは?導入メリットと補助金の活用法
GX志向型住宅ではHEMS導入が必須要件となっており、年間8万円以上の光熱費削減と160万円の補助金が受けられます。仕組みから導入メリット、補助金活用法まで分かりやすく解説します。電気代の高騰が続くなか、多くの家庭で省エネ住宅への関心が高まっています。
なかでも注目を集めているのが「GX志向型住宅」です。この住宅では、エネルギーを効率的に管理する「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」の導入が不可欠であり、従来の住宅とは一線を画す省エネ性能を実現します。
本記事では、GX志向型住宅とHEMSの関係をわかりやすく解説します。
GX志向型住宅とは?
GX志向型住宅は「子育てグリーン住宅支援事業」で新たに位置づけられた次世代型の省エネ住宅です。ZEHを上回る性能を持ち、断熱や省エネを徹底することで環境負荷の削減に貢献します。
GXは「グリーントランスフォーメーション」の略で、化石燃料からクリーンエネルギーへ社会を転換する取り組みを指します。
GX志向型住宅の条件
GX志向型住宅として認定されるためには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
1:断熱等性能等級6以上
断熱等性能等級6は、最高水準の等級7に次ぐ高性能な基準です。全国を8つの地域に分け、それぞれの気候に合わせて数値が決められています。
評価の指標は次の2つです。
● UA値(外皮平均熱貫流率):壁や窓から逃げる熱の量。小さいほど性能が高い。
● ηAC値(冷房期の日射熱取得率):夏に窓から入る日射熱の量。こちらも小さいほど優れている。
さらに2025年以降は、等級4が住宅の最低基準となり、すべての新築住宅において高い断熱性能が求められます。 そのため、等級6以上を満たす住宅は、快適性だけでなく、将来的な資産価値の維持や向上にもつながる重要な基準といえるでしょう。
2:一次エネルギー消費量の削減率35%以上(再生可能エネルギーを除く)
この条件は、太陽光発電などに頼らず「建物そのものの性能」で省エネを実現することを求めています。
主な工夫は次のとおりです。
● 高断熱・高気密の設計
● 高効率エアコンや給湯器の導入
● LED照明の採用
● HEMSによるエネルギー使用の最適制御
これらによって、一般的な住宅と比べて、35%以上の削減を達成することが基準です。
従来のZEH水準住宅は20%削減が条件でした。それに比べ、GX志向型住宅はさらに厳しい水準であり、住宅の基本性能が大きく問われる指標となっています。
3:一次エネルギー消費量の削減率100%以上(再生可能エネルギーを含む)
この条件では、再生可能エネルギーを含めた年間のエネルギー収支をゼロ以下にすることが求められます。つまり、使う量と同じかそれ以上のエネルギーを自ら生み出す「エネルギー自給住宅」を実現することが目標です。
具体的には次のような仕組みを活用します。
● 太陽光発電や蓄電池の設置
● 高断熱・高気密設計による消費エネルギーの最小化
● 余剰電力の売電による光熱費削減
ただし、地域や立地条件によって基準が緩和されます。
● 寒冷地・多雪地域:削減率75%以上で認められる
● 都市部の狭小地:再生可能エネルギー未導入の「ZEH Oriented」も認められる
このように、GX志向型住宅は高性能を求めつつも、地域事情に合わせた柔軟な基準が設けられています。
HEMS(高度エネルギーマネジメント)の導入
GX志向型住宅で欠かせないのが、HEMS(Home Energy Management System)の導入です。
HEMSは単に電気使用量を表示するだけではありません。
● 「ECHONET Lite AIF仕様」に対応したコントローラの設置が必須
● 認証済みの製品(一般社団法人エコーネットコンソーシアムのHPに掲載)を使用する必要あり
この仕組みにより、住宅内のエネルギーを一元的に管理できます。たとえば、
● 太陽光発電の状況に合わせて家電を自動制御
● 電気料金の時間帯変動に応じて賢く運用
こうした最適化が可能になり、GX志向型住宅の性能を最大限に引き出します。
GX志向型住宅とZEH・長期優良住宅の違い
GX志向型住宅は、ZEHや長期優良住宅と同じ「高性能住宅」に分類されますが、求められる基準や必須条件に大きな違いがあります。とくに省エネ性能の水準とHEMS導入の義務化は、GX志向型住宅ならではの特徴です。
比較項目 GX志向型住宅 ZEH水準住宅 長期優良住宅
断熱性能 等級6以上 等級5以上 等級5以上
省エネ性能
(再エネ除く) 一次エネルギー消費量35%以上削減 20%以上削減 省エネ基準に適合
エネルギー自給
(再エネ含む) 100%以上削減(実質ゼロエネルギー) 100%以上削減 規定なし
HEMS導入 必須 任意 任意
こちらの記事では、GX志向型住宅について解説しています。
メリット・ZEHとの違いや補助金も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
GX志向型住宅に必須のHEMSとは?
HEMSは、家庭内のエネルギーをまとめて管理・制御するシステムです。従来の省エネモニターのように「使用量を表示するだけ」ではなく、住宅内の機器をネットワークでつなぎ、AIやアルゴリズムを使って最適な運用を行う点が大きな特徴です。
GX志向型住宅では、経済産業省が推奨する通信規格「ECHONET Lite」に対応したHEMSの導入が義務付けられています。この規格のおかげで、メーカーが異なる機器同士でも相互接続が可能となり、住宅全体をひとつの仕組みとして制御できます。
補足すると、HEMSの導入には次のようなメリットがあります。
● 自動制御:太陽光発電や電気料金の時間帯に合わせて自動で調整
● 機器連携:エアコンや給湯器などをまとめて制御
● 負担軽減:住人が意識的に省エネ行動を取らなくても効果を発揮
つまりGX志向型住宅では、住人の努力や知識に頼らずとも、HEMSが「見える化」と「自動制御」で最適な省エネを実現します。暮らしの快適さを損なわず、効率的にエネルギーを活用できるのが最大の魅力です。
出典:環境省「HEMSについて」
GX志向型住宅におけるHEMSの役割
GX志向型住宅において、HEMSは単なる省エネ機器ではありません。住宅が持つ断熱性能や再生可能エネルギー設備の力を最大限に引き出し、暮らし全体をコントロールする「住宅の頭脳」として機能します。
エネルギーの「見える化」
HEMSは、家庭内のエネルギー使用状況をリアルタイムで表示します。エアコンや照明など機器ごとの消費量が数値やグラフで確認できるので、家族の省エネ意識が自然と高まります。
また、太陽光発電を導入していれば、発電量と消費量の関係も一目で把握可能です。どれだけ自給自足できているか、余剰電力がどの程度あるかを確認しながら、効率的なエネルギー利用につなげられます。
自動制御によるエネルギー最適化
HEMSの真価は「見える化」を超え、収集したデータをもとにAIが機器を自動制御する点にあります。
たとえば、電力料金に応じて、深夜はエコキュートの沸き上げや蓄電池の充電を行い、昼間のピーク時には蓄電池や太陽光の電力を優先して使うことで購入電力を抑えます。
さらに、天気予報と連動し、翌日の発電量を予測して前日の充電量を調整するなど、先読みした運用も可能です。 意識しなくても、常に最適なエネルギー環境を維持できるのがHEMSの大きな強みです。
スマート家電や太陽光発電との連携
現代のHEMSは、電力監視だけでなく住宅内の多様な設備を一元管理できます。エアコンや給湯器、照明、さらには冷蔵庫や洗濯機まで連携が可能です。
太陽光発電と組み合わせれば、発電量に合わせて家電の稼働を調整できます。たとえば、晴天時の発電ピークに洗濯機や食器洗い機を自動で動かすことで、発電した電力を無駄なく活用できます。
さらに、EVとV2Hシステムを導入すれば、車のバッテリーを家庭用蓄電池として利用できます。 昼間の太陽光で充電し、夜間や停電時に家庭へ電力を供給するなど、より柔軟で安心なエネルギー循環が実現します。
GX志向型住宅を建てるメリット
GX志向型住宅は、初期費用は高くなる傾向がありますが、長期的な視点で見ると多くのメリットをもたらします。
光熱費を削減できる
GX志向型住宅は、高断熱構造と高効率設備、そしてHEMSの自動制御によって光熱費を大きく抑えられます。
国土交通省の試算では、東京都で太陽光発電付きのZEH水準住宅を建てた場合、省エネ基準住宅より年間約8万円削減可能とされており、GX志向型住宅ならさらに効果が期待できます。
引用:国土交通省「家選びの基準変わります」(https://www.mlit.go.jp/shoene-jutaku/economic-benefits/energy-bills/index.html)
電気料金の安い時間帯を活用した運転や自家消費率の向上により、電気代の支払いを最小限に抑えられる点も特徴です。長期的には数百万円規模の削減につながり、初期費用を十分に回収できるメリットがあります。
快適で健康的な住まいを実現できる
断熱性能等級6以上の住宅は、外気温の影響を受けにくく、夏は涼しく冬は暖かい快適な環境を少ないエネルギーで保てます。室内の温度差も小さくなるので、ヒートショックのリスクを減らし、高齢者や子どもがいる家庭に安心をもたらします。
さらに、HEMSと換気システムを組み合わせれば、空気の流れも自動管理され、室内の空気質が改善されます。アレルギーや呼吸器系の不調を防ぎやすくなり、健康的な暮らしを支えることができます。
災害時でも電力を確保できる
近年は自然災害による停電が増えており、GX志向型住宅の自立性は大きな安心につながります。太陽光発電と蓄電池を備えることで、停電時でも一定期間の電力をまかなうことができます。
HEMSは、停電を検知すると自動で自立運転モードに切り替え、限られた電力を効率的に配分します。たとえば、エコキュートの沸き上げを止め、照明や冷蔵庫など必要な機器に優先的に供給します。
この仕組みにより、数日間の停電でも普段に近い生活を維持できます。とくに在宅勤務が一般化した今、パソコンやインターネット環境を守れることは、暮らしにも仕事にも大きな価値があります。
住宅の資産価値が向上する
省エネ性能の高い住宅は、資産価値の維持にも有利です。
政府は2025年以降に省エネ基準の適合を義務化し、2030年以降はZEH基準への引き上げを予定しています。GX志向型住宅はこうした基準を先取りした「未来対応住宅」として、中古市場でも評価されやすくなります。
一方で、省エネ性能の低い住宅は売却時に不利になるリスクがあります。対してGX志向型住宅は、安定した資産価値を保てる点が大きな強みです。加えて、光熱費の削減効果が維持費を下げるので、購入希望者にとって魅力的な選択肢となり、市場競争力も高まります。
GX志向型住宅やHEMSに使える補助金
GX志向型住宅の建築費用を大きく支援する制度が「子育てグリーン住宅支援事業」です。2025年に始まった新しい補助金制度で、GX志向型住宅に対して支援が用意されています。
この事業は子育て世帯や若者夫婦世帯を主な対象としていますが、GX志向型住宅に限ってはすべての世帯が補助対象となります。補助額は以下のとおりです。
● GX志向型住宅:160万円/戸
● 長期優良住宅:80万円/戸
● ZEH水準住宅:40万円/戸
申請は建築・販売事業者が行い、消費者が直接申請することはできません。そのため、GX志向型住宅を検討する際は「グリーン住宅支援事業者」として登録された会社に依頼する必要があります。
ただし2025年8月時点で、GX志向型住宅への補助金は予算上限に達し受付を終了しています。 2026年度の制度についてはまだ未定で、例年10月〜3月の予算案決定時期に発表される可能性があります。最新情報をこまめに確認しておくことが重要です。
出典:子育てグリーン住宅支援事業公式サイト
まとめ
GX志向型住宅は、高断熱性能と大幅な省エネ基準、そしてHEMSの導入により、環境性能と快適性を両立した次世代住宅です。電気代削減、災害時の安心、資産価値の維持と、多くのメリットをもたらします。
辰巳住宅は、地域に根ざした3,500棟以上の施工実績と高気密・高断熱住宅へのこだわりを活かし、最適なHEMS導入をサポートしています。さらにデザイン性を重視し、長期優良住宅を標準仕様とすることで、高い性能と快適な暮らしを両立させています。
光熱費を抑えつつ、理想の暮らしを叶える住まいをご提案いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
こちらでは、辰巳住宅株式会社で取り扱う住宅やサービスについてご紹介します。
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